紀州うめ研究協議会は20日、田辺市内で2023年度「ウメ研究成果発表会」を開いた。
発表会には、梅主産地の日高・西牟婁地方の生産者や関係機関150人が集まった。県のうめ研究所やJAなどから6人が栽培技術やクビアカツヤカミキリ、病害などの研究について報告した。
JA紀南からは中央営農経済センターの前川実営農指導員が梅のムカデ整枝の現地実証の内容を報告した。計画密植による早期成園化と樹高を抑えた効率化の実証モデルで、「南高」の13年生となった昨年、10㌃当たり収量3・9㌧を達成した取り組みを紹介した。
前川営農指導員が報告したムカデ整枝は、管理作業の省力化を図る有望樹形としてうめ研究所が着目していた技術を、現地実証として11年度から田辺市内で取り組んだ。
植栽当初から主枝を1本にして斜め方向に整枝し、側枝を主枝に直接的に配置するする樹形。列間3㍍、株間4㍍で植栽した。樹高を2㍍に抑えコンパクトなため作業効率が良いとも確認できた。
毎年4月と5月の2回、摘芯処理することにより、樹冠内部から出る結果層も増え、従来の開芯自然形よりも収量が増えた。
23年度は4人の生産者が計30㌃で栽培しており、前川営農指導員も「JAとして、継続的な栽培講習会等を行って、新たに導入を検討する生産者を増やしたい」と今後の展望を語った。
梅産地での被害が危惧されるクビアカツヤカミキリについては、県うめ研究所の裏垣翔野研究員が報告した。
この虫は特定外来生物に指定され、和歌山県内では19年に県北部で確認され、23年には御坊市など県中部まで被害が拡大している。和歌山県は全国生産量の7割を占める梅産地で、中でもみなべ町や田辺市は主産地であることから、なおさら警戒感が高まっている。
うめ研究所では、樹幹散布を想定した薬剤試験を行い、「モスピラン顆粒水和剤で高い殺虫効果を確認した」などと報告。被害拡大を防止するには、早期発見と駆除が重要だとし、成虫や、フラスと呼ばれる幼虫の排泄物と木くずが混ざった物質を株元などで発見したら、速やかにJAや県の担当部署に連絡してほしいと呼びかけた。
発表会では、剪定枝の燻製用チップ開発、梅の新品種「露茜」の果実肥大対策、温暖化に対応した梅干しの高品質化技術、梅の病害対策、うめ研究所などの報告もあった。