JA紀南は、男女共同参画基本計画やJAグループが目標とする正組合員、総代、役員の女性参画目標を全て達成し、事業運営に女性の声を反映するよう努めている。「女性の活躍なくしてJAの発展なし」とする経営層の考えをトップダウンで推進してきた成果が表れている。
2021年10月に開かれた第29回JA全国大会決議で、女性比率を正組合員30%以上、総代15%以上、役員15%以上の目標が掲げられたが、すでに同JAは19年に全項目を達成。総代や役員は改選時、正組合員については世帯主だけでなく配偶者の組合員化を進めるなど着実に女性割合を高めてきた。
直近での女性の占める割合は、正組合員36・5%(9011人中3290人)、総代35%(550人中193人)、役員については17・2%(58人中10人)となっている。それぞれ目標数値を掲げて進めてきたが、特に直接JA運営に関与する女性理事の選出には難航した。
2003年のJA誕生以来、女性会組織から3人の理事を登用しているが、19年の役員改選時、男女共同参画基本計画の成果目標に準じ役員に占める女性理事の割合を15%以上と設定したことにより、9人の登用が必要となった。しかも全体では農協法の改正により理事定数における認定農業者・実践的能力者の割合も満たさなければならならず、選出に困難を極めた。
この反省から、次の2022年の役員改選時には、認定農業者の割合は男性理事だけで満たせるよう選出枠を設定。さらに役員選考にあたっては、従来選考委員を総代と地区運営委員から選出していたが、必要に応じてそれ以外の女性の委員を選出できるよう要領を変更したことで、比較的スムーズに選出することができた。
2019年から理事を務める竹内明子さん(57)は「就任前は任務を遂行できるか不安だったが、経験してみてJAの運営の仕組みが分かりいい経験となっている。できるだけ地域の声や女性の目線での意見も発言するよう心がけている」と話す。
女性理事が増えたことで、毎月開かれる理事会や、企画管理・金融共済・営農経済の専門委員会で発言がしやすくなったという理事もいる。意見としては、くらしの活動やAコープ・直売事業に関する内容が多く、実際に意見を反映した事例もある。
JAは女性理事の登用について「男性では気が付きにくい意見や発想も多く、経験を積むことで発言も増えている。理事だけでなく地域の女性組合員の声も随時拾いながら、運営に生かしていきたい」としている。