JA紀南は和歌山大学と協力し、「梅収穫スタディケーション」を今年初めて着手した。農作業の労働力不足や消費対策など、梅産地が抱える課題解決に向けた新たな取り組みで、JAは「若者の就農につながり、将来的に梅産地を守れる仕組みになれば」と期待している。
梅収穫スタディケーションとは、スタディー(学習)、ワーク(仕事)、バケーション(休暇)を掛け合わせた造語。単なる農業体験とは異なり、学生が労働力として梅の収穫を手伝うため、受け入れ農家が対価を支払う。宿泊費や交通費は学生負担だが、農作業以外の空き時間はゆっくり観光も楽しむことができる。
今回の取り組みに参加したのは和歌山大学の地域交流援農サークル「agrico(アグリコ)」のメンバー8人。6月中2回に分けて西牟婁郡上富田町岩田にある谷本憲司さん(46)の梅畑で、早朝から収穫作業と収穫ネットの片付けを行った。
参加した武田克己さん(20)は、「このような機会がないと農業に関わることができないと思って参加した。産地で実際に収穫体験などをすることでしか学べないことも多く勉強になった」と話した。
学生を受け入れた谷本さんは「梅の収穫作業は短期集中で、どうしてもその期間は人手がほしいがなかなか見つからない。この取り組みによって収穫時期の人手不足解消につながり、少しでも地元の農業がよくなればと思う」と期待を示す。
一方、初めての試みのため課題も残る。学生がより参加しやすいよう費用負担の軽減や、慢性的な人手不足を補うためには、参加大学の拡大も進めていく必要がある。
JA紀南の榎本義人指導部長は「将来的には、梅の収穫時期に途切れることなく学生が産地に入ってもらえるような環境を作り、産地が抱える人手不足の解消と学生の梅農業体験から梅の食文化を学習することで食生活に浸透し、若者層の消費拡大につながれば」と期待している。