農繁期の労働力不足解消へ

農繁期の労働力不足解消へ
成立数は開設当時の約4倍
JA紀南の無料職業紹介所
農繁期の労働力不足解消へ

 JA紀南では、農家の労働力不足解消に向け、指導部が窓口となり「無料職業紹介所」を開設している。梅の繁忙期である5月・6月は1年で最も農家のニーズが高く、6月27日までに40件の雇用が成立した。成立数は3年前の開設当時の約4倍で、担当者は「地域でJA無料職業紹介事業が徐々に認知され、今年は早い時期から求人募集に多くの農家の協力を得られたことが大きい」としている。
仕組みとしては、JAグループ和歌山が運営する農業求人サイト「わかやまの農業で働こう!」に求人者(農家)を登録し、働き手である求職者が作業内容や時給等を見て応募すると、JAに申し込みが通知される。そこから担当者が求人者と求職者の間を取り持ち、面談等を重ねてマッチングにつなげていく。
JA紀南の無料職業紹介所は、令和元年11月から運用を始めた。初年度の雇用成立数は12人で、昨年度は倍の24人であった。今年度は6月27日までに農家64人(求人数は145人)の登録があり、求職応募・相談者は72人。その後JAが雇用条件や労働期間などの意向を確認し、最終的に農家23人に対して、40人のマッチングが成立した。
今年はさらに、昨年までに一度契約を結んだ求職者が、紹介所を通さず農家との合意で働くリピーターも多く、雇用契約数以上の働き手を得られた。
上富田町岡の水本歳万さん(51)は、3㌶で梅を栽培し、年間約75㌧を白干し梅に加工している。この時期は毎年人手不足で、作業が本格化する6月上旬から約1か月間梅収穫を行うため、今回初めてJAを通じて働き手を募集したところ、県内外在住の3名と雇用が成立した。
水本さんが提示した雇用条件に合致したのは、和歌山県有田川町の寺杣理恵さん、同町の黒田紗代さん、東京都小金井市の瀬田千奈美さん。寺杣さんは初日、「地元でミカン収穫を手伝ったことはあるが、梅は初めて。和歌山県と言えば梅というイメージが強いので、しっかり経験したい」と意気込みを語った。
寺杣さんらは6月6日から約1か月間、梅のネット収穫を行う。水本さんは「毎年、少人数の人を雇って作業にあたるが、今年は紹介所を通じて3人も来てくれ助かった。担い手不足の時代に即した取り組みだと思う」と話した。
梅収穫をはじめて、10日目を迎えた瀬田さんは「1日で相当な量の梅が落ちることに驚いた。それを集めるために中腰の姿勢をとり続けるのは大変で、農家さんの日々の努力はすごいものだと感じる」と感想を述べた。
JAの担当者は、「JAは、求職者を漠然と農家に紹介するのではなく、両者が納得できる条件で気持ちよく働いてもらえるよう意向を十分に確かめ、求人者に紹介する。今後は梅シーズンだけでなく、年間を通して求人数を維持するのが課題」と話している。